長くなります・・・

かわうそくんです。
最近よく取り上げられている、再生医療。今回は、当院でできる再生医療の治療についてお話ししたいと思います。
幹細胞って聞いたことありませんか?動物の体には様々な器官や臓器などを構成する細胞が、多数集まって存在しています。それらが協力しながら働くことで、心臓を動かしたり、脳でものを考えたり、腎臓で血液をきれいにしたり、新しい皮膚の細胞を作ったりしています。幹細胞は、様々な働きを持つこれらの細胞を作り出すこと、つまり、細胞の供給源なのです。このような幹細胞の性質を利用して、失われてしまった体の形状や機能を、再生させる治療が再生医療です。

山中教授で有名になったips細胞。
それまでは一度変化した細胞は他の細胞に変化しないと言われていましたが、皮膚の細胞から、もう一度、どんな細胞にも変化できる細胞を作り出した、これがips細胞です。ただ、この細胞は人工的に作られているため、実際の治療に使えるのはまだ時間がかかると言われています。
一方で、人工的に作り出した細胞ではなく、もともと体内にある幹細胞を用いた治療、これが当院でできる再生医療です。

今回お話しするのは、皮下脂肪から取り出した「脂肪幹細胞」を使った治療です。ips細胞とは違って、限られた細胞(血管・筋肉・骨・軟骨など)にしか変化できないこと、もともと動物の体にある細胞を使うこと、が大きく違います。

今回の症例、きなこちゃん(コーギー、♀、4歳)

腰が抜けたように、後肢が動かないとのことで来院。自力排尿、排便はできるものの、4本足で立つことができず、椎間板ヘルニアと診断されましたが、手術が適応せず、注射と飲み薬とレーザーで治療を続けながら、脂肪幹細胞を使った再生医療を始めることになりました。
まず、全身麻酔をかけてパチンコ玉よりやや大きいくらいの脂肪を取り出します。きなこちゃんは、左肩の辺りから脂肪を取りました。

そして、無菌室で、その脂肪から幹細胞のみを培養し、細胞の数を増やします。増やした幹細胞は、洗浄し、集めてから点滴によって体内に戻します。 脂肪を採取してから点滴するまでに、約2週間かかります。きなこちゃんの細胞も順調に増えたので、先日点滴で戻しました。点滴は静脈から入れるため、前脚を毛刈りし、点滴の針を入れて約1時間ほどお預かりして点滴します。きなこちゃんは、とってもおとなしく点滴させてくれました。

点滴後は特に身体に負担なく帰ることができます。自分の細胞から培養したものを身体に戻すので、副作用は特にありません。一回の脂肪から、三回まで細胞を培養して身体に戻すことができます。その子の症状をみながら、2度、3度目を行うか決めます。きなこちゃんは、今後も今までと同じように、レーザー治療を続けながら、回復を診ていく予定です。

再生医療は、もともとの治療にプラスして行える治療です。
副作用もほとんどなく、飼い主さんが何か他にもしてあげたいという希望に応えれる治療方法の一つです。

病院改装によって、少しでもペットと飼い主さんに提供できる医療を増やそうとして、始めた再生医療椎間板ヘルニアのように良くなるまで時間がかかる病気に対して、選択肢を増やすことで、ペットが早く良くなる可能性を高めることができると信じて、病院全体でこれからもサポートしていきます。